起きて居間に行くと夫がいた。抜歯した箇所の出血が止まらず口の中に溜まり飲み込めないレベルのためその都度口を濯ぎにいかないとならないし、口から血と唾液が溢れてしまうから寝られなかったらしい。一夜明けて少しずつ血の量は減ってきているけどまだ食べ物や飲み物を口にするのは無理とのこと。そんな状態の夫を前に何かを食べるのも気が引けて、神妙な顔でお茶を飲むにとどめた。
夫に寄り添っていた優しいマロ。
猫らの世話と家事をして、映画を観に出かける。
街で見かけたかわいいちゃん。
今日観た映画は「枯れ葉」。やっと神奈川にも来てくれたので鑑賞。引退宣言を撤回したアキカウリスマキ監督の新作だ。
良かった。貧しい男女の出会いやすれ違い、邂逅、そこにロシアとウクライナの戦争を伝えるラジオが現実感を増している。ロシアの隣国フィンランドではより近くに戦争を感じているというのがよくわかる。
吐き捨てるような「戦争はクソよ」というような言葉がとても重い。仕事を失っても大変な日常でもなんとかやっていける。戦争がなければ。もちろん日々大変だししんどい。でもそんな現実に希望を持たせてくれるのはやはり愛なのだ。
「希望のかなた」でも思ったけど、カウリスマキの映画に出てくる人たちはみんな優しい。ネットカフェの店員ですら優しい。それが本当にほっとさせられる。
抜群に主人公が良い。たくましく一人で生きている女性だ。主人公の友達も良い。スーパーをクビになった後の二人の別れ方のかっこよさ。ブタに乾杯も言ってみたいセリフだ。
どのショットも絵になるのがすごいしかっこいい。思わずパンフレットを買ったらこれがまたとても素敵なんですよ。
エンドロールの「枯葉」が沁みた。
良い映画だったなあと思って携帯の電源を入れたら、夫がようやく出血が減ってきたので作ったと卵としらすのお粥の写真を送ってきていた。すごい！！！美味しそう！と即返事をする。いや本当にすごいことだよ。自分で料理を一切作らないし、熱で臥している私に何も買ってこなかった過去を持つ男こと夫が自分のためにそんなに好きじゃないお粥を作る……前代未聞の大偉業ですよ。よっぽどお腹が空いていたんだろうけど。何か食べられそうなものはないか探しながらスーパーで買い物して帰宅。
3時間ほど爆睡していた夫が起きてきたので、夕飯の支度。といっても飲み込めそうなものしか作れないから、帆立のトロトロ湯豆腐の一品だけ。チンゲンサイの茎の部分などは私が食べて、くたくたの柔らかい葉と卵と豆腐は夫に食べてもらった。帆立缶って美味しいね。
明日はもう少し胃に溜まるものを作ろう。
