君美しく


11日に中村登の「君美しく」を観たのですがまたしても鑑賞メーターになかったのでこちらに感想を書きます。

私はただの映画好きなので映画雑学的なことは詳しくないのですが(知っていたらもっと楽しめると思うので知りたいです)、昔は映画会社によって出す作品に特徴があったそうで、松竹といえばファミリー向け映画なのだそうです。それでこの「君美しく」も典型的な松竹ホームドラマで、太平洋戦争で父親と長男を亡くした家族が生きていく話です。この長男はまだ10代の長女に「母と妹と弟を頼む」という言葉を残して戦地に旅立ったため、どうみても貧乏くじすぎる長女は若くして娘時代を封印し家族のために、父となり母(実の母親は老いて頼りなく、後半は痴呆の症状もでているのでアテにならない)となって生きていかねばならなくなったという内容です。暗いです。

弟は、姉が自身の娘時代を捨てるためにした行為を目撃してしまったために、姉を裏切り者かつ汚らわしいと思っており、姉が家族を思って口うるさくなるのを疎ましく思うわ、姉が密かに誰か(実は死んだ兄が残した子ども)へ送金しているのを嗅ぎつけて疑ったりするわ、ギャンブルに手を出すわ、そのくせ口だけは一人前と、姉にとにかく反抗的です。妹は末っ子らしく天真爛漫なのですが、消息不明だった姉の想い人と戦後ぐうぜんに出会い、心ときめかす姉を尻目に2人は恋仲に、そして婚約してしまいます。家族のために身を粉にして働き、娘らしいこともできず、婚期ももちろん逃している(見合いの話があっても家族を放っておけないと断っていた)姉にしてみればもう散々です。男は日本航空のパイロットで、当時は縁故採用などありまくりだったのか、妹をスチュワーデスにしてあげたり、弟に飛行機の技師の仕事をあてがったりしてくれたため、家族の幸せを第一に思わざるをえない姉は涙で耐えるしかありません。本当に暗いです。普段、好き勝手な妹や弟にいらついている長女がこの映画を観たら奇声を発するのではないかと思います。

中村登の作品をwowowでいくつも放送してくれたので観ましたが、明らかにこの作品は精彩を欠いているように思いました。当時はこのような話が実際にたくさんあったからこの題材で映画を作ったのかもしれませんが、俳優たちの魅力が霞んでいたし、何かこうパッとしない感じです。それだけ映画会社の意向というのが強い時代だったのか、わかりませんが、1度でじゅうぶん、もしくは観なくていいくらいの作品だと思いました。映画の内容を思い出すだけで暗い気持ちになります。