父のこと

f:id:lulilala:20220609005142p:image

父の日なので、父のことを思い出していた。父は私が14歳の時に癌で他界した。49歳だった。

入院中、私は時々見舞いに行っていたが、父と確執のある兄は一度も見舞いに行ったことがなかった。ところが死ぬ直前のクリスマス、兄が突然病室に入って来たのだった。私も父も突然のことに言葉をなくして驚いた。

兄が部屋に入ってきた瞬間の父の顔が忘れられない。ハッとして顔がサッと紅潮してくしゃくしゃっとしたあの顔。私が行った時はそんなことなかったなあ、やっぱりお兄ちゃんは特別なんだろう、そう思った。

12月31日に父は死んだ。そして、父の遺品を整理していたのだが、なんと『娘とうまく付き合う方法』みたいな本が出てきたのである。晴天の霹靂だった。父は私に対してとても素っ気なかったので、まさかこんな本を読んでいたとは思わなかったし、やだ、恥ずかしい、こんな本を読んで、そう思った。それが、最近そのことを思い出すと泣けてしょうがなくなる。

父は父親(私の祖父)というものを知らずに育った。1歳の時に亡くなったらしい。だから、父親は厳しくいなければいかんと思ったのか、私たちにはとても厳しく言葉少なく接していた。そのため私と兄は父と会話した記憶がほとんどないし、正直苦手だった。そんな父が『娘と上手く付き合う方法』みたいな本を読んでいた。

私のことも考えてくれてたんだな。そりゃそうか。そうだよな。

友達から「おりん(私)はまだ父親の死を乗り越えてない」と言われたことがあるのだけど、その時はピンとこなかった。でも最近ようやく父のことを受け入れられるようになった気がしている。父の年齢に近くなってきて、ようやくその不器用さを素直に受け入れることができた気がするのだ。時間、かかったなあ。まあ、生きて上手く付き合う方法を実践して欲しかったけどね。

というわけで、父の日にちょっと感傷的になってしまったのでした。おしまい。